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とにかく推しに甘い

芸人交換日記(※ネタバレ)

TSUTAYAで何か面白そうな映画はないかな〜と思っていたところ、目下5→9でどハマり中の田中圭大先生さまのパッケージが目に入ったので、とりあえずレンタルしてみたところ、この上なく面白くて、なぜ自分はこの舞台を生で観劇できなかったのかと凹んでいます。

単純に言えば田中と甲本のイエローハーツというお笑いコンビの話。田中がオードリーの若林正恭、甲本が田中圭(田中なのに甲本)で、田中がボケで甲本がツッコミ。田中は根が真面目そうな誠実な男で、逆に甲本はチャラ系で借金こさえちゃうようなやつなのに実は熱血で真っ直ぐな男、という設定。なんかぴったりな感じ(当社比)

舞台はぜんぶ通すと140分くらいあって、DVDだと1冊目から6冊目の6部に分かれている(舞台もそうだったのかな?)正直最初は「140分もあるのかよ…」と思ったけど、そんなことすっかり忘れるくらい面白かったし、やばいくらい泣いた。

1冊目から3冊目は、結成して10年経つのに鳴かず飛ばずのイエローハーツをなんとかしたくてお互いを知るためにもって甲本が始めた交換日記を通じて、イエローハーツが売れるためにがむしゃらに頑張っていく。

最初は交換日記を嫌がっていた田中もだんだん乗り気になってきて、結果としてその「交換日記」がふたりの再起のきっかけになる。

青春とはひたむきさのことで、だから1冊目から3冊目まではイエローハーツの「青春」の物語だった。お互いがお互いに本音を言い、醜い部分を曝け出して、それでもがむしゃらにひとつの目標に向かって走る。笑軍決定戦(というM-1みたいなやつ)当日までのカウントダウンに、お互いの良いところを一つずつ言っていこう、ってなった時に、甲本も田中も「お前は面白い」って笑顔で言い合うのがすごい印象的だった。どんな言葉より、きっと価値があるんだろうなという、「お前は、面白いよ」という、言葉。

ふたりは順調に勝ち進んでいって、準決勝に進出する。相手はずっとライバル視している、BBというコンビ。

二人にはどうしても勝って欲しかったし、優勝して欲しかったし、一緒にいて欲しかった。でも、それは無理なんだろうなってわかってた。

甲本がボケを増やしてもっと早口で行こうって言ったときも、反対してた田中が最後には、早口のパターンでいかせてくださいって笑顔で言ったときも、彼らの物語はここで終わりなんだという漠然とした予感があった。

だって1冊目の最初で、甲本の娘が「昔、あなたとコンビを組んでいた甲本の娘です」って自己紹介するんだもん。組んでいる、ではなくて、組んでいた、だし、そもそもずっと続けていたらこんな自己紹介しなくて済んだし、つまりこの芸人交換日記は、これまで語られてこなかった、今はもうどこにもない、「イエローハーツ」というコンビの過去の物語なのだった。

笑軍決定戦準決勝でBBに負けたイエローハーツ。田中はこれからももっと二人で頑張っていこうって、ふたりならやれるって笑顔で言う。でも、そんな田中に対して甲本は「解散してくれ」の一点張り。挙句一人でオーディションを受けて、勝手に受かって、それは一年かけて世界を回る番組で。だから田中はどんなに嫌でも、しんどくても甲本の提案を受けざるをえない。

代々木公園での漫才を最後にイエローハーツは解散する。今まででいちばんの出来だった、楽しかったと笑う田中と、俺は辛いと悲痛な顔をする甲本。辛いなら無理をしてやらなくていい、と今までずっと反対し続けていた田中がぽつりと「解散しよう」と言う。

ここからの展開がほんとうに泣ける!5冊目、6冊目は甲本、甲本の娘、田中の独白で進むんだけど、涙無くしては見れない。

5冊目の最初はイエローハーツの冠番組ができて、それを喜ぶ甲本と、田中。イエローハーツの解散なんて夢だったんだって一瞬思う。でも、田中はずっと客席に背中を向けたままで、だから観客はこれが痛いほどの現実だということを知る。だからこれは、甲本の叶わなかった夢の続き。

もーーーーね!!!甲本の決意が辛い。夢を諦めることも才能だって、頭では理解してても、心がついていかない。こうすることが自分のためだったんだって、才能がある田中には出来ない、才能のない自分にたった一つ残された才能なんだって、そう自分に言い聞かせて。でもほんとうは田中と漫才をしたくてしょうがない。涙ながらに「お前と漫才がしてぇよ」叫んで、でも今更どうしようもない。才能のある田中のために、そして才能のない自分ができる、たったひとつの才能。

俺はお前にひとつ嘘を言った。

最後の漫才の時、俺は辛いばっかりだって言ったけど、本当はそれだけじゃなくて。

めちゃめちゃ楽しかった。

お前とまた漫才がしたい。

そういう思いの丈を綴った交換日記。一生田中の手に届くはずはなかったのに、それは甲本が癌になって余命幾ばくもないという時になって、甲本の娘から田中の手に渡る。そして冒頭に繋がる。

この時田中は別の人間とコンビを組んでいて、大ブレイクしていて冠番組も持っていて、側からみれば順風満帆そのものでしかない。だから娘も最後に「田中さんがこの手紙をよんでくれますように」って書いたんだよなあ。読んでくれたよ。

甲本が娘にずっと言い聞かせていたこと。「夢を諦めるな」「たなふく(田中のコンビ名)が一番好きな芸人」これを聞いたらもう泣くしかないでしょ…。田中の隣に立っているのが自分でなくても、テレビに出て楽しそうに漫才をしている田中たちが、いっとうすきなんだよ。愛だね。恋かもしれない。

それから甲本の届かないはずで綴られた感情を読んだ田中は烈火のごとく怒る。自分だけがしんどいと思いやがってって、お前のやったことが正義だって、美談だって周りには捉えられてしまうんだって。

これを聞いて確かにな〜と思った。わたしは甲本の感情も決意も、みんな知ってて、だから甲本が選びとった選択肢をとてもうつくしいものだと、美談だと捉えた。でも、実際当事者である田中からしてみればこんな勝手なことはないよね。こちらの幸福を勝手に決め付けられたもので、自分の幸せは自分で決めるものなのにね。

烈火のごとく怒った田中はもう二度と会わないし会いたくないし、お前が死んで正解だった的なニュアンスのことを言う。これで終わりだって、自分に言い聞かせながら。

でも次の日。舞台の中心で頭を抱えて蹲っていた田中はこう言う。これが全てなんだなって思う。「まだ終われない」

甲本に会いたいよって。今の方が昔より順風満帆なはずなのに、でも昔の方が楽しかったって、甲本と漫才していた時間が、いちばん楽しかったって。

ここの田中っていうか若林さんがすごいんだよなあ。号泣して鼻はぐずぐずだし目は真っ赤だし声はガラガラだし。でもそれだけ必死に感情を伝えてるっていうのがわかる、ほんとうにすごい。そしてここでわたしの涙腺は決壊し、使い物にならなくなりました!

会いたい、もう一度一緒に漫才がしたいって、甲本が入院している病院に行く。けれど、時間は少しも残っていなくて、甲本は最後に「また一緒に漫才しよう。天国で」って手紙を残して死んでしまう。この辺りで泣きすぎて目が腫れ始める。

そしてここからがすごいのが、お互いが死んだ後っていうか、二人が天国で再開して、天国で漫才をするの。すごい楽しそうで、生き生きしててきらきらしてて、若林さんさっきまであなた号泣してませんでしたっけ?っていうくらい笑顔で漫才してて、もうほんと、このあたりから突っ伏して泣き始めるわたしの構図です。

最後の田中の「お前と漫才ができるならどこだって天国だよ」という台詞、これはずっと言いたかった言葉なのかなあと思いました。

簡単にまとめちゃうと、イエローハーツっていう全く売れない芸人コンビが、全く売れないまま解散してしまって、そのまま相方は死んでしまうっていう悲惨な物語に見えてしまうんだけど、でも田中も甲本も最後には二人で笑って漫才ができた。

だからこれは、とても幸福な物語だったと、わたしは思うのです。

読み返したらめちゃめちゃポエムになってるけど、文章書くの苦手だから許してください!!!TSUTAYAでレンタルできます!!!!!みんなレンタルしてください!!!

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